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日が昇るのは酷く遅い。 一人の時間は…リボーンが居なくなってからの時間は酷く長い。一日というのはこんなにも苦痛なものだっただろうか。一人、書類を書くため机に向かい、ただ日が昇るのを静かに待つ。それはとても苦痛であり、しかし例えベッドに入ったとしても眠気が一向に来ることはない。紛らわしにいつものように大量の書類をもちこむものの2時から4時の間には終わってしまうため時間を潰してくれるものは今、何一つない。 いっそ、このまま銃で頭を撃ち抜いてしまおうかと考えて、そんな自分に笑った。逝かれているか…。眠ることができれば少しは気も紛らわせるだろうが、それは出来ない。否、目覚めることが怖いのか?彼のいない世界に絶望する。こんなにも依存しているなど想わなかった。人は大抵失ってからその者の大切さに気付く。だから一層に愚かなのだ。朝から嫌な予感は耐えなかったというのに、何故自分は彼を行かせてしまったのか、自分が朝、彼を止めていれば食い止められていたのではないか、せめて着いて行けば彼を守れたのではないか、そうやって毎日、何一つ意味などない葛藤を繰り返す。あれから、リボーンを殺した組織の情報を集めているものの今一つ確信な情報が手に入らない。もしも見つけたとしたら俺は?多分、そいつ等を皆殺しにするだろう。今まで少しでも誰も死なぬよう、怪我を負わぬようにと努めてきたくせに…多分自分が死んでもいいから、誰一人生かさず米神に、心臓に銃を向け、迷わず其処に弾を打ち込み殺すのだろう。残酷で自己中心的で、最低な判断だとわかっていても。そして、そしたら今度こそ頭を打ち抜こうか?きっと、楽になれる。夜に怯えることもないし無理に笑う必要もないしリボーンのいない世界なら、生きる意味も何もない。空っぽのまま苦しむならば死んだ方が幸せだろう。もしかしたら…馬鹿な話だと誰かは笑うかもしれないけれど、あの世で彼に会えるかもしれない。相変わらずのとんだ考えに自分が、腹を抱えて笑ってしまうくらい可笑しい。カチャカチャと手に余る銃の音、朝焼けの来ない薄暗い空、ランプの消え欠けた静かな部屋、この世には自分しかいない不可思議な感覚。
そんなわけがない、…銃が地面へと転がる。カラカラと音を立てて頼りなく回った。笑い出してしまいそうな衝動に駆られる。一週間以上も睡眠も食事もとっていない身体が正常であるはずがない。「早く、くたばればいいのに」まだ機能する身体が、まだ正常である精神が憎い。ソファーへと深く身体を沈め、眼を覆った。 日が昇り少しずつ光が部屋へと入る。闇に隠した目を静かにあける。太陽はとても煩わし 「ツナ。」 「おはよう。」 それでも口は勝手に動き、挨拶をし正常を振る舞う。勝手に笑顔が造られ、まるでリボーンのいない毎日でさえ、当たり前であるかのように。嗚呼、もう俺の世界など此処にはないというのに。笑いかける俺に、苦笑を浮かべる。なんでお前がそんな顔をする? 「もしも、俺がリボーンを殺した奴等の情報をもっていて、そいつらのアジトがわかったら…どうしますか?」 突飛よしのない質問であった。どうする??そんなの・・・ 「皆殺し。」 「あっ、そういえば久々におにぎり作ってみたんです。日本恋しいかと想って。」 日本は確かに懐かしいものではあるものの、意味の分からない会話に呆気にとられるしかなかった。どこから出てきたんだと言わんばかりに大きい皿に、十数個ものおにぎりが並んでいた。どれもこれも三角とも丸とも言えないあまりにもいびつな形をしている。(強いて言えば6、7角形か?)そういえば、昔一度だけリボーンにおにぎりを作ってもらったことがあった。異様に巨大で、多分このランボのおにぎりよりもいびつであったもの。かろうじてのりで全体を包んでいるものの(しかも数枚で・・だ。)塩はかけてないし、のりもご飯だらけだし中にはミートのスパゲティが入っていて、あれはむせた。普通のイタリアンは美味いくせに、『てめぇが日本に帰りたそうな顔するからだろ…。』そんな台詞に言葉を失いつつ『下手くそ…。』文句をいって平らげたことを思い出した。(あの後はコテンパに嫌みばかり言われたが。)
そう言って笑うと、少しだけ憤慨して「味の保証しませんから!」そう言いながら棚を漁り、異様に濃い緑茶を淹れてくれた。(ランボは味を濃くするのが得意なのか?)他愛のない会話をして、ちょっとしたことで笑って、少しだけ絡みつく鎖が落ちたような感覚。久々のご飯は身体へと行き渡る。 すっかり日は昇り、部屋を光が包み込む。眩しさに目を細める。何故か少しだけ泣きそうになった。くあぁ、と大きな欠伸をしながら、流石に早起きはキツいですねと彼は笑う。(ランボはいつまでも子供体温の早寝遅起きだから。)流石に言いはしないけれども。 「部屋で休んだら?どうせ今日は何もないし。」 「ちょ、ランボ!!」 眠りたくても、俺は眠れないのだ。溜め息を一つ零す。先ほどからランボは頼りない笑みを浮かべるばかりだった。抱きしめる腕が強まる。冷えきった身体は眠さも増してか、ただでさえ高いランボの体温を奪い、熱をためる。(心臓の音すら煩わしい。)まるで熱を分けあうような(気持ちが悪い)いらぬ温もり。 「貴方を救いに来たんです・・。」 寝ぼけているのか、意味の分からない台詞。日差しが目障りで、窓に背を目を瞑る。ランボの腕がそれを覆うように、強く抱きしめられる。抜け出すタイミングを失い、ただ動けずにいた。デジャヴのような感覚がずっと拭えきれない。あの時、彼は俺に何を言った?ノイズのはいる記憶。早く、早く早くあいつ等を殺さなくては・・・、そして?闇が全てを包み何もかも忘れてしまえればいいのに。 「綱吉・・・、おやすみ。」 そうじゃなければ・・・、永遠にこの夢に沈んでしまいたいと、意識を手放した。
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