「ねぇ、骸様。」
「クローム」
其れは僕にとって半身であり妹であり、多分愛しい人でもあった(彼以上に愛しい人などこの世に存在したりはしないけれども。)
「貴方を愛してたんです。」
クロームは悲しそうな瞳をそっと閉じた。
「知ってます、よ。」
しかし彼女が誰を愛し誰と結婚し僕の手を放れようが其れはどうでもいいことに過ぎなかった。(だってそうではないか、僕はあの人以外要らないのだから。)
「ボスを愛しているの。」
それでも彼は誰にも譲れない。其れは駄目です。静かに言葉を零す。彼を手にいれることは一生出来ない。あの家庭教師が居る限り。彼を手に入れることはしてはならない。守護者の暗黙のルールであった。
「貴方がボスを好きでなければきっと私は一生貴方だけを愛していた。」
その瞳の光が彼によって手に入れたものだとしたらそれはとても酷なことだ。(だって僕だけを愛していた方が楽だっただろう?)
「貴方を…貴方だけをずっと愛していたかった。」
それでも其れはきっと無理だったでしょう。大空の全ての僕の闇でさえ埋め尽くしてしまう彼を前に誰が惹かれずにいれようか。

「泣かないでください。可愛い(僕だけの、だった)クローム。」
「もう、言ってはくれないのですね。」
二度と言うことはないだろう。彼だけしか愛すことが出来ない僕等。もしかしたら其れは守護者に与えられた呪いなのかもしれない。
「いや、呪いは彼のほうか。」
「骸、凪。」

「綱吉君。」「ボス。」
「久しぶりに食事行こう。」
「「貴方が望むなら。」」
その言葉に苦笑しか浮かべることの出来ない彼は一人だけを愛すことなど許されない。彼は誰か一人の元に居座ることは許されなく、全てを平等に愛し、少なくとも全てに平等に愛を貰う。誰かを愛すことは許されないし誰かだけを求めることなど許されはしない。

「愛しているんです貴方を。」
「貴方だけを愛します、ボス。」

其れはきっと彼にとって何よりも重い呪いの言葉。其れでも手に入れなくても口にせずには居られない。
「俺は二人のこと大好きだよ。」

何よりも残酷な言葉。其れを受け入れ僕等は笑う。手の甲へ忠誠の証を。青空を大空を掴むことなどちっぽけな人間に出来やしない。
(其れはボンゴレに架せられた呪い。)


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5927

きっともう わかっていた。目を開けて暗闇のなか広がるのは甘い花の香りだけ
手を伸ばせば何かに触れ、それは簡単に開いた。

周りを見渡しても森の中の何処だか思い当たる節はなくそして自分の入っていたものが棺だと気づき思わず声をあげる。其れと共に怒鳴るような声が聞こえ思わず肩を振るわせた。

「・・あなたは・・」
外人ならではの薄い灰色の髪に 真中分けで特徴的な青い目。

「・・獄・・寺クン?」


「・・・・じゅ・・うだい・・・め・・・」

見開いた目が潤んだのはきっと気のせいだと願った。
そのまま勢いよく飛びつかれ、体重が圧し掛かる。
「わっ・・・!!」
「十代目・・・」

「十代目・・・」

何度も・・俺の名を繰り返す。

「・・ごくでら・・・君・・・」

10年後も変わらずに自分を慕う獄寺の姿。自分の入っていた棺。わかっていたけれども認めたくなどはなかった。

「お願いです・・・・ どうか・・・」

そっと囁く言葉の続きはきかない。
姿を現さなかったリボーン。

「十代目・・・」
きつく抱きしめられる体。昔だったなら少しでも手が触れただけでスイマセンと勢いよく謝る彼は・・其処にはいない。

生暖かい雫が自分の頬へと落ちた。


「十代目・・・」

「獄寺君・・ 泣かないで?」

そっと背中へと 手を回す。その手は・・・震えていたけれども。


『ねえ・・リボーンは・・・?』
そんなこと聞けそうにも無かった。

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いつからか気づいていた
知らない振りをしていただけで

「どうして貴方はこう・・怪我ばかりしてくるのですか。」
ため息をついても其れを笑って誤魔化す。
嘘をつくとき貴方はよく、眉に皺をよせて頼りなく笑う
「雲雀さんを怒らせちゃって。」

其れもわざとなのでしょう?

『いっそ殺してくれれば楽だったのに』
どこからか聞こえてきてしまいそうな彼の声に耳を塞ぐ

それでもわかっていた
いつか・・いつか

「ねぇ獄寺君。」
机にカランと一つの銃が転がった。


「此れで、 俺を殺して?」
貴方はとても残酷な事ばかり言う。
「雲雀さんも・・骸さんも結局俺を殺してなどくれなかった。」
「噛み殺す、と何度行っても一度も殺したことなんてないですよねって挑発したり」
「俺の体を手に入れるためにボンゴレに入ったんじゃないですかと言っても」
「結局・・。」

彼は笑う。
「其れは、皆貴方が好きだからでしょう。」

見開いた目にはほんのすこし 光が残っていた(気がした。)

「それでも・・俺は駄目なんだ。」
知っていた。あの時から あの人が消えてから貴方は確実に壊れていった。
もう限界なのだろう。
それでも・・・

「俺等は 貴方に生きていてほしいと願うのです・・」

また 彼は嘘をつく。
「俺は リボーン以外要らないよ。」
そんな重いものもボンゴレも君たちもどうでもいいんだと・・・
下手糞すぎて泣いてしまいそうな嘘。そうだったら・・彼が消えたあとにボンゴレなどにならなかったでしょう?
本当は何一つ手を放せずに
全てが大切すぎて

「だからさ 誰も傷つかないで?」
そうやって願ってきたのでしょう?
皆が・・幸せであることを。

そっと手が重なる。白い手に不釣合いな黒い凶器
「だからさ・・どうか 俺を殺して。」
そっと握らされた銃は重すぎて落としてしまいそうで
それでも・・ その瞳は嘘ではなかった。

「俺は・・駄目なんだ。アイツがいないと 壊れてしまった。そして其れは伝染する。」
それでも俺等は貴方に下について、貴方に生きていてほしいと 笑ってほしいと願っていた。

「誰かが壊れる前に・・お願いだよ。」
縋るように強く握られた手がまるで死体のように冷たくて
そんな願い

聞けるわけがないと・・・・

頬を涙がつたる。
銃口は彼の額へと向けられる。それは彼の手によって

「ねぇ獄寺君。」

涙で前が上手く見えない自分が余りにも情けなかった。
それでも

「我侭で馬鹿で駄目な俺についてきてくれて有難う。

そしてどうか・・・・ 

笑って?」


本当に我侭なお願いに・・・
そして 本当に・・ 眩しいくらいの笑顔に

涙は止まる事を忘れた。

(結局優しすぎた貴方は壊れてしまったけれども。)


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リボツナ

目覚めなくていいと俺は棺へと篭もる。其処に眠る人に温もりはない。腐らないように加工したせいで硝煙の匂いもバラの香りも彼からすることはない。
「ねぇ、リボーン。今日も沢山人が死んだんだ。俺のために、誰かのために。」

「ボスになるって決めた時、誰も殺さない何よりも強いマフィアになりたいって、想ってた。」
薬の匂いを誤魔化すむせかえるような甘い毒々しい花の香り。
「何処で間違えたのかな…皆、傷ついてばかりだ。」
「この手は人一人満足に救えない。」
奪うことは、いとも簡単なのに。上手く笑えなかった。
「やっぱ、俺は駄目ツナなままだ。」
「泣かないでよ。リボーン」
ぽたぽたと涙が彼の頬へ零れる。止まることを知らない雫。彼の胸に顔を埋めたって頭を撫でる手はないしどんなに話しかけても返ってくる声はない。

「リボーン」

「俺は、何処で間違えた?」

返事は永遠に返ってくることはないけれども、そろそろ獄寺君か雲雀さんが迎えに来る時間だから、其れまではリボーンと共に、死んだ。

(体温も何もかも分けあってさ、俺もそっちに消えてしまいたい。)