(1827)


何度も囁き続けた言葉はただの無意味なものとなり宙へと消える。いつになれば君はその言葉の意味に気付く?それとも、男が男を愛おしいと想う感情が理解出来ないのか。(そんなの僕にも理解出来ないよ。)それでも・・・

「ねぇ、何度言ったら理解してくれるの?」
「ヒバリさ…」
そんな怯えた瞳で見ないでよ。悲しくなるから、それとも君は無意識に傷つけることが得意なのか。そんなに気が長い方じゃないから、君が気付いてくれるまで、なんて辛抱強く待てる自信もない。嗚呼、こんなにも君のことばかり考える自分など、なんて滑稽なことだ。
「他の奴なんかと群れないで。」
「僕以外見ることなんて許さない。」
「ヒバリさん?」
いっそのこと、鎖で繋いで、部屋に閉じ込めて僕だけのものにしようか?そしたら君は怯えた瞳で僕を見て、きっと最後には泣いてしまうね。泣いている君も愛おしいけれども、
「ねぇ・・笑ってよ。」
「ヒバ リ・・・さ、」

重なった唇に暖かな指先に触れるだけの頬に、心地よい柔らかさに目眩すら覚えるというのに…
「っ・・!!?!」
勢い良く突き飛ばし、彼は口元を手で覆った。
「なっな・・何を・・・な、なん・・で 」
だから物わかりの悪い君は嫌いなんだ。何度も囁いただろう。
「嫌だった?」
「いや、そうじゃなくて・・!!」
顔を赤くさせ声を張り上げる。群れる弱い草食動物など噛み殺してしまえばいいのに。

「何度叫んだら伝わる?」
「・・・」

「愛してる、・・・綱吉。」
何度目かの告白。愛してると叫ぼうと、それを行動に移そうと
「・・・・(意味が、わからな・・い)」
ただただ君は困惑した瞳で、まだ怯えたまま僕を見るだけ。
(次はキスだけじゃ抑えられないかもしれないのに。)



「10代目…、」

この想いを伝えてしまったら貴方は怒るでしょうか、それともいつものように、少しだけ眉を下げて苦笑します?きっと後者であると、想像で俺も苦笑い。貴方が誰よりも強いことなんてずっと知っていたんです。あの日、貴方に出会い忠誠を誓った日から。それでも普段どこか頼りない貴方を、クラスの奴等は10代目の強さを知らないから貴方をバカにする。それでもきっとお優しいからそのような奴等の失礼な醜態すら許していたのでしょうけど、それでも…俺は少しだけ勘違いをしていたんです。10代目の右腕は俺でしかなくて、俺にはそのことにしか頭になく、小さなことで傷ついてしまう貴方を守れるような気がしていた。そして、俺にしか守れないと想っていた。だから山本や雲雀も芝生ヘッドも嫌いだし、本当は…彼が10代目の家庭教師だとしても…ずっと傍にいて、10代目に頼られて、誰よりも強いリボーンさんにも、貴方の傍を譲りたくなどなかった。愚かな話でしょう?結局、黒曜の奴が10代目を狙って来たときも、10代目を庇って受けた傷も俺は貴方を守れ嬉しかったのに、10代目は「御免」と涙を流すだけだった。(泣いて欲しくて守ったわけじゃないのに。)
記憶はなくとも、六道骸に操られた俺や姉貴を守るため自分自身を傷つけた。あの日、10代目に命を預けると約束した日から守ろうとした結果、俺はいつも空回りで、…そして守られているだけだった。リング争奪戦が始まって、いつもとは違う10代目が現れたとき…力の差を歴然と感じた。俺はこんなところで…何躓いているか、貴方の強さに憧れると共に自分の弱さに、不甲斐なさに少しだけ泣きそうになった。そして、今までとは違う10代目を少し遠く感じて、
「どうか、…」
誰も傷つけたくないと言った貴方に安心して、その誰かのために傷つく貴方にかける言葉も見つけられなくて、勝てる戦いに、勝たなければならない戦いに破れた俺に「有難う」と笑ってくれた貴方に…
「変わらないで下さい…」
我儘しか押しつけることが出来ない。それしか想いを伝えるすべを知らない。零れる言葉を抑えることは出来ない。貴方はきっと、そのたった一言にどれだけの想いが入っているかなど知らないでしょうけど、例えばこの一言に俺がどれだけ罪悪感を重みを泣いてしまいそうになるくらい申し訳なくて、それでも抑えることが出来ないなんて、子供じみた感情を抱いているなんて…貴方は知る余地もないでしょうけど、
「獄寺…くん?」


「愛しているんです。」
その言葉に、まるで予想で作り出したシナリオのビデオが流れるように、
「俺も、好きだよ?」
少しだけ考えるように目を空に泳がせ、そして困り顔の浮かべたまま…俺に笑いかけた。つられて俺も頼りない笑顔を浮かべることしかできなかった。
(そうじゃない、忠誠じゃ、友情なんかじゃ足りない…)