白い長い坂の途中
店先に並んだ色鮮やかな菓子に
眩暈がしたのは
その色彩が余りにも眩しかったからだとか
何が入っているのかわからないからだとか
普段甘い物を食べなくなったからだとか
そんな事を思ったりしたけど
ひときは綺麗な紫色に
彼の笑った顔が見えた気がしたからだ
一つ手に取ってから
袋一杯に詰めてもらう

これを見たら何と思うだろう

毒でも入っているんじゃないかとか(うちの元美術担当の家庭教師は健在だから)
何か見返りを求められるんじゃないかとか(あんな子に見返りを求める程落ちちゃいない)
素直に受け取ってくれれば1番楽なんだけど

彼はいつも葡萄のアメしか食べない

『泣き虫のアメ好き』

 




彼は袋いっぱいの紫色の綺麗な飴を僕の上へと降らした
飴の雨だ(なんて魅力的なんだろう)
そしていつもより優しい笑顔で(少なくともそうみえたんだ。ただの錯覚?)
おみやげ、なんて笑った。
今日は何の日?
今日は何の日?
あちこちから甘い香りが漂うの
沢山のチョコレートなんていらない(鼻血でちゃうし)
他の女の子からのプレゼントなんていらない(欲しいのは一つだけ)
ぽかんと口の閉まらない僕に
「バレンタインだからね。」
なんて、甘い笑顔。
思わず涙がでて見られないように抱きついた。
彼はきっと困惑した表情で僕の名を呼ぶ。
「ガ・マ・ン・・・」
(君にこの気持ちがバレないように)
「何がだよ!チョコレートがよかったのか?!」
慌てる彼。
(僕が葡萄が好きだって覚えてたのは君だけだよ?)
何も言えずただしがみつく僕の頭をぎこちなく撫でる手は・・・
10年前から変わらず 暖かいのだ。

『優しい敵のボス』