| ふわりと桜の少し甘い香りがした。
「君…こんな所で何やってるの?」
みかけない顔だね・・っと上から声が降ってくる。見上げれば漆黒の髪に制服、また黒い耳が風に少しだけ靡く。綺麗な男の人が桜の木の上に立っていた。
「えっ?」
声をかけられたのは自分だろうか?あたりを見渡せど他に人影は見当たらない。
「俺…ですか?」
男は眉を顰め他に誰がいるの、と不機嫌そうに言う。
「もう授業は始まっている。風紀委員だからね…サボってる奴は、噛み殺す。」
…かみ、殺す?あまり聞かない単語だ。
「いや…あの、」
「何?」
「最初先生がいたんですが…途中腹減ったとかどっかに走っていってしまって…」
「…だから?」
君がサボっている理由にはなっていないと言いたげな瞳。
「…だから…その…」
「教室は何処ですか…?」
一瞬だけキョトンとした表情をみせる男。しかしすぐにまた眉(眉間)に皺をよせる。
「ねぇ馬鹿にしてるの?もう4月も半ば…教室が分からない訳ないだろう。」
「あっいや!!」
慌てて誤解を解こうとするが男は聞く耳を持たないと言った雰囲気で制服からよくわからない棒状のもの(トンファー)を二つ構えた。
「ちょ、そんな高い木の上に立ち上がったら危ないですよ!!!!」
(突っ込むべきはそこではない。)
「余計なお世話だよ。」
男は今にもこちらに殴りかかって来る勢いであった。
「だっだから!!俺は今日からここに転校してきたのに先生とはぐれて教室わからなくて迷子なんれっ…」
早口で話したら思いっきり噛んだ。
「…なんです。」
暫く無言のままお互い動かない。(いや俺の場合は動けない。)男はふわりと桜の木から降りる。そんな高い所から!!慌ててみるも俺の心配をよそにその人は軽々と着地し「何間抜けな顔してるの。」と嫌そうな顔をし、歩き始めた。
「あのっ…、何処に!?」
「…教室に決まってるでしょ。学生は勉強するものだ。」
「?有難う御座います。」
「君の為じゃない。」
そう言うと広い歩幅でズンズンと先に進む。予想以上に早く早歩きから駆け足で追いかけるものの距離が縮まりはしない。しかし途中で何回か転ぶとその度、少し先で立ち止まってくれる。多分本当は良い人なのだ。少しだけ嬉しくなった。
「あのっ…」
「…。」
「名前は?」
「…。」
「あっ、ちなみに俺はっ」
早足でしゃべるのは結構キツい。窓の外に目をやると桜が満開である。なかなかの絶景だと思…
「ぶっ!!」
余所見をしていたせいでその人の背中に思いっきりぶつかる。
「す、すいませ」
男は何も言わず目の前のドアを開けた。そこには朝は隣にいたオレンジ色の髪の教師。
「あれ雲雀。珍しいな教室来るなんて。あっでも遅刻だぞ。」
「あっ…」
無事教室に着いたのだ。案内してくれた人はヒバリ、と言うらしい。
「あのヒバリさん有難う御座います。」
しかし礼をいうのとほぼ同時に先生が先ほどの棒のようなもので殴られるのが見えた。凄い音と先生の情けない悲鳴が響き渡る
「ってひちゅな!!」
今気づいたかのように血を吐きながら勢い良く起きあがる。
「ひっ!」
ほのぼのとした雰囲気は一転、先生が土下座せんばかりの勢いで謝ってきた。
「スマン!!お前がいるのを忘れてつい朝ご飯が…」
「…いや。」
俺は大丈夫だが…先生の出血のほうが気になる。
「あの、それより先生、血…大丈夫ですか?」
しかし返事は少し離れた場所から返ってくる。
「そんな奴の心配なんてしなくて良いわよ。生きてるのすらおこがましい存在なんだから。」
「ちょっ!にるる!!」
「黙ってなさいよすんこ。本当のことでしょ。で、あんたは?」
そこではじめてクラスの視線が自分に向けられたのに気づく。
「えっと…今日から…」
自己紹介をしようと思ったが生きるのさえおこがましいって…、と落ち込んでいる先生が目に入る。
「…あの…先生本当に大丈夫ですか?」
「あっああ、ひちゅなは優しいんだな。」
心配しただけなのにそこまで泣きそうな目をされても…。今までどれだけの扱いだったのだろうか?そのまま
「ひちゅな!!お前みたいな可愛い子が転校してきて嬉しいぞ先生はっ!」
などと抱きつかれそうになったが数ヶ所から石が先生に向けて投げられ床へと崩れ落ちた。
「で、今日から?」
しきり直すように薄紫の髪をした綺麗な人(確かにるるさん?と言っていただろうか。)が問う。
「あっ今日からお世話になりますひちゅなです。よろしくお願いします。」
只でさえ人前で喋るのが苦手なのにそうも注目されると居心地が悪い。
「よし!恒例の転校生質問大会をやるぞ!」
いつの間にやら復活した先生がそんなことを言い出す。
「えっ!?」
「先生。」
ツインテールの可愛らしいお姉さんが手をあげる。
「なんだつっこ。」
「そんな恒例ないですよね。」
「まあまあんなこと気にするなって。」
そこに割り込むかのように爽やかに笑う青年はたけしと言うらしい。
「んじゃ俺からな。」
なんだか頼りになりそうな人である。
「ひちゅなは彼氏いるのか?」
「ん?」
爽やかな笑顔だったけれども、凄い聞き間違えをした気がする。(それともうっかり言い間違えたのかな?)
「ちょ!!」
何人かの声もはもったけれども多分俺と同じ聞き間違えをしたのだろう。
「えっと彼女はいません。でもここでは皆と…女の子とも仲良くなりたいなと思ってます。」
拍手が起こる中
「いやいや彼女じゃなくて…かれ…」
たけしにも数ヶ所から投石が飛んでいった。(学校特有の突っ込みか何かだろうか?)
「…おだやかじゃねぇな。」
そう言うたけしの笑顔がおだやかじゃなかったのは多分俺の見間違えだ。
「あの…」
「ん?」
「ボスって呼んで良い?」
「え?あっ、うん?」
可愛らしく微笑んだ変わった髪型の少女はドクロと言うらしい。
「ふふふ、わからないことがあったら何でも聞いてね?クラスの皆家族みたいなものだから。」
「…姉貴どんだけ家族増やすつもりだよ。」
「本当に。もうイカとエビの世話だけで充分よ。」
「…何だと。」
「何よ。」
「二人とも。」
話によるとすんこさん(最初に優しく声をかけてくれた人だ)とすみすさん(あれ?すみおさん…?)、むんこさん、でこぽんさん、ビノさんは一緒に住んでいるらしい。皆仲がよさそうで少しだけ羨ましい。
「よし他に質問はないか?」
俺としては駄目ライフを送ってきた手前聞かれても気の利いた答えを出せる気はしないのだが。
「ひちゅな殿は兄弟とかはいないのですか?」
「(どの…?)えっあっ…妹?が一人、かな…。」
「妹君ですか、きっと可愛らしいんでしょうね。」
「有難う…ってあれ?今日一緒に転校してくるはずだったのに。」
ああそれなら…、と先生が話始める。どうやらヒナ(俺の妹のこと)は今日はコチラに向かう都合が合わなかったらしくまた後日来るらしい。
「楽しみですね。あっ拙者、バジルと申します。よろしくお願いします。」
ふわりと笑う。このクラスには綺麗だったり可愛い人が多いらしい。
「うん。」
「えっとひちゅなの席はドクロとでこぽんの間な。」
「よろしくお願いします。」
「うん…ボス」
「よろしくね。」
何か大事なことを忘れている気がするのだけど。どうやら思い出せそうにない。さてさてそれから?
(ああ、このまま平和に過ごせればいいのだが。)
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