運命とはとても残酷だ。骸は目の前の死体をみて苦笑した。血だらけになりながら頭を一発打ち抜かれた死体。ひちゅなや多くの者がよく慕っていた紫髪の少女。涙のあとと、制服に付いたのは返り血。誰がこの子が乗ったなどと思おうか。まぁ、関係のないことだと髪をかきあげる。

足音が響く、ひちゅなやクロームでないことは確かであった。隠れる必要はとくにない。ただ武器を構えていると現れたのは彼女にどことなく似た、紫髪の少年だった。


「骸………、姉…貴…………」

ふと、自分はタイミングや運が悪いのではないかと思った。

「おま………え、」

勘違いされるのは初めてではない。しかし言い訳する意味も特に見いだせない。

「どうか、しましたか?」
ふわりと、笑う。

男は手にしていたナイフを構える。本当は自分の姉もゲームに乗っていたのだと告げようかとも考えた。しかし、それではあまりにも気の毒ではないか。


「どうせ死ぬ運命なら少しでも夢は見ないと。」


場慣れしている…。死角を狙う攻撃、位置を察知させないような工夫、狙う位置もなかなか的確である。

「なんで、なんで姉貴を殺した!!!!」
その声は悲痛に満ちていた。

「なら、なんで貴方は他の人達を殺してきたのです?」
「………それは、」

怪我もしてないのに血の付いた制服で、自分にナイフをむけるもの。彼も僕も同じであった。ただ違うのは彼が守るべき者が、目の前で息絶えていたということだ。僕は………あの子が死んでしまったらどうなるのだろうか。


「姉貴を守るためだ……!!」
仮に僕が彼女を殺してたとしても彼には僕を責める非はなかった。


「僕にも、どうしても守りたい者があるんです。」


だから、最後まで彼を守りきるまでは、


死ねない。
男は顔を歪めた。肩を何かが突く。


「…なるほど、」


考えたものです。笑いたくなった。今までナイフ一本で戦ってきたのも相手を油断させるためだけだったと言うのか。掠っただけなのが幸いだが、それは彼なりの策略であった。
「中中いい腕ですが、場数が違うんです。それに君と違って……、」


「僕を待っている者がいる。」

小さな針が男に掠る。膝を着くのが見えた。


「申し訳ありませんが…。」

男は顔を歪めた。
「お前………、な、にを」

彼の眉間に銃口を合わせる。
「毒入りの針ですが、せめて苦しまないように。」


また、会いましょう。


銃声が響いた。頬に当たった返り血。ため息を着く。


「嗚呼、なんて言い訳すればいいのでしょう。」
心配症な彼に、泣かせない言い訳を。

それにしても愛する者が死んだというのにあの男はそれなりに冷静であった。きっとあれが自分であったなら………


「壊れるでしょうね。」


滑稽な自分の姿が容易に想像できて、それほどまであの子を愛しいと思う自分を笑いたくなった。