嗚呼どうか少しでも君が傷つかないように。

ゲームと言う名のこの殺し合いが始まったのは…今から4時間ほど前のことだ。此だから人間など生きる価値などないと思う。ゲームの名はバトルロワイヤル、生徒同士に殺し合いをさせ生き残った一人だけが無事帰ることを許される。戦争を禁止され、そこそこの娯楽に飽きた政府達の戯言(たわごと)だ。逃げ出す者が出ないよう首に無線付きの爆発物が取り付けられる。また制限時間を設け、殺し合わずその時間までに数人が生きていた場合も爆破。制限時間は72時間(3日間)一人ずつリュックが配布されその中には2日分の食料と水、そして何かしらの武器がいれられていた。開けてみると皮肉にも当たりの拳銃・・回転式のS&W 60。まぁそんなものがなくとも誰かを殺すことなど容易なことであったが…。始まる前から決めていたこと。自分の番となり森にでると柄にもなく只ひたすら走り続けた。きっと一人怯えて震えている者のために。

「ひちゅ……っ!」

色素の薄い髪に男にしては小柄な体。彼の姿が見え、声を掛けようと想ったが隣には予想外の人物が居たために顔が強ばる。
「骸!」
「…骸さま…。」
「…クロームも一緒でしたか。」

あまり良いと言える状況ではないものの彼の安全のためには良いのかもしれない。ひちゅなの不安のような安堵したような、どちらともとれる顔を見て静かに微笑む。

「大丈夫ですよ。皆、乗るような人物ではないのでしょう?」


少しでも彼が怯えないように、悲しまないように。
その為なら僕は、偽善者だって演じて見せよう。その言葉に安堵したように

「…うん」
彼は頼りなく微笑むのだ。 元々運動神経など皆無なひちゅなと、元々生きるために必死に色々な道を越えてきた僕らとでは体力が違う。歩く早さを合わせても体力が違えばどうしよもない。
「少し休みますか?」
「えっ、いや俺は…」
「クロームも居ますし、僕も少し歩き疲れてしまいました。」

クロームも静かに頷きひちゅなを見る。人一倍皆に気を使うくせに自分が気を使われるのは苦手で敏感な彼。

「…有り難う。」

それでもふわりと優しい笑みを浮かべてすべてを受け入れるのだ…だから君は、傍に居るには眩しすぎる。安全そうな木と木の間に身を隠し一息つくと疲れからか気づけばひちゅなは寝ていた。

「……。」

視線が突き刺さる。
「さて、クローム」

先ほどとは違う演技臭い笑顔で

「条約を、結びませんか?」

静かに誓いを

「条約…?」

不審そうな顔は消えない
「そうです。」

それでも僕らはわかっているはずだ

「彼を傷つけないために。」

そしてだからこそ信頼しているはずだ(例え嘘くさく安っぽい言葉でも)
「彼を守るために。」
「最後の三人になるまでは貴女も守ってあげますよ。クローム。」


彼が泣かないように。彼女は、静かに笑った。


「ボスを守るためなら。」


さぁ、早く彼を悪夢から解放するためにも、殺し合おうではないか。例え其れが政府の上で踊っていたとしても決して…………。
「クロームは彼の傍に居てください。30分ほど辺りを見てきます。それと彼が起きたらコレを水に溶かして飲ませてください。」
「これは?」
「睡眠薬です。ちょうど1時間半〜2時間ころにくる。死んだ者のために、彼が苦しむ必要などない。」

あと2時間もすれば6時間ごとに呼ばれる死者の名前が聞こえるであろう。きっと彼は泣いてしまうから。

「骸様、貴方は…。なぜ・・(そこまでボスを・・)」


最後になったら教えてあげます。静かに微笑んでその場を後にした。 少し離れたところで叫び声が聞こえる。そちらに向かうと一人の薄紫色の髪をした女が立っていた。よく綱吉君との仲を邪魔をしてきたことを覚えている。そしてその下に横たわっていたのは…変な名前の(…パッパラぱー…?)少し違うが多分そんな名前だった男だ。あの女は乗ったのだろうか、まぁあの性格からしても乗っていたとしてもそう不思議ではない。武器は何か、次に会ったときのために知る必要がある。ひちゅなはこの女を慕っているようだっだが…まあ早めに乗って人数を減らしてくれるに越したことはない。(全てはそう…この目的のためだけに)女が去ってから死体を確認し、銃殺であったことがわかった。

「彼が、泣かなければいいのですが。」

だから彼は愚かだと思う。全ての者を慈しみ愛し、ただ皆が幸せであるようにと願う。それがどれだけ愚かなことかくらいわかっていたとしても。そして弱く傷つきやすいから殺せもせず救えもせずただ自分の無力さを嘆くのだ。しかしだからこそ彼は皆から愛されるのだろうけれども。(それでも本当は僕だけを愛し僕だけに愛されればよかったのだ)そうすればきっと傷つかずに笑えたかもしれないじゃないか。

茂みを漁る音。銃を静かに構える。そこから顔を出したのは学生にしてはあまりにも幼い少女だった。

「ひっ…」
小さく飲んだ息の音と恐怖と困惑に満ちた目。

「チーパッぱ…く…?」
面倒だとも思うしそれと共に同情もした。(ああそうだ…少年の名はチーパッパだった…。)

「あなたが………?」

その先の言葉など聞かなくともわかる。逃げてしまえばいいのに…無力さを哀れむ。例えその男を僕が殺していようと居まいと…

「せめて苦しまずに逝けること幸運としてください。」
何も変わらないのだ。(そう…だって彼以外いらないのだから)

「…。」

少女は泣きそうな目をしていた。それでも蛇に睨まれた蛙のように動く術をしらない。名も知らない小さな小さな命。カチリと眉間に銃を向ける。

「さようなら。」
小さな銃声と一瞬だけ跳ねた小さな体。痙攣しながら血を流し消えた小さな命。 可哀想な少女の名を知る余地はない。(少しだけ…ほんの少しだけその無力さを愛しいと思った。)

「ご免なさい。でも…」
(彼以外必要ないのです)食料と水だけをいただき彼らの元へと戻る。(武器は少女にはよく似合う可愛らしいピンだった)
「骸さま…」
「骸!!!どこ行ってたんだよ…!」
何故か泣きそうな彼に戸惑いを隠せない。

「えっと少しトイレに……」
「10分以上も!!??」

疑いの目。

「…ついでに何処か小屋などがないか見てきただけですよ?いい場所がありましたしそちらに移動しましょう。」

「……。」
「綱吉君…?」

突然体重がかかる。しばらく何が起こったのかわからなかった。

「勝手に…いなくならないで…。」

震えた手が体がしがみつくように縋るように…
「………綱吉…君?」
「何かあったら…どうすんだよ…。」

この子は…何処まで愚かなのだろうか。
「一人で何処かにいくなんて……」
認めない 小さく囁く。

「スイマセン…そんな心配すると思わなくて…」
「…い、いや勝手に寝てた俺が悪いんだけど…!ごめん」

自分が勢い余って抱きついたことを恥じたのか慌てて離れた。

「で、でもこれからは勝手にいなくならないこと!!いいな?」

愚かで無知な彼を愛しいと思う。
「はい、約束です。」
安堵するような溜息(そんな嘘ですら君は疑うことを知らない。)
「君は…」
(皆が死んで自分だけ生き残ったとしたら…どうするのだろうか。)

「え?なんか言った?」
「いえ…。」

きっと壊れてしまうからそのときは全ての記憶をけしてあげようと思った。 (例え…君が一生僕を忘れたとしても。)

気が向いたら連載できたら良いな。