赤黒く染まった白。描くキャンパスは闇。光など要らない。
だから君など要らない。


「骸。」

気づいて欲しくなどない。ぬくもりが欲しいなど嘘だ。


「いつも君は…」
いつになったら乗っ取らせてくれるのだと。

「…フゥ太に危害くわえんなよ?」

怯えでも畏怖でも嫌悪でもない、ただの呆れ。

「それと…こんなコトして大丈夫なのかよ?」

「そう思うならさっさと契約してください。」

いやだよ、と苦い顔を浮かべる。 沢田綱吉は、マフィアとして甘すぎる男だった。



「で…何の用…。」


彼が顔をあげるとともに開いたドア。


「フゥ太早く遊ぶぞボケェ!!」
「ツナサンハヤク、フゥタモアソブ!!」

沢田綱吉と僕(この子供)の周りを囲む。

「ちょ、ランボ!イーピンも!!」
「ハヤクハヤク!」




「行こう。ツナ兄。」
子供を演じ沢田綱吉の手を握り歩き出す。


「フゥ…骸!?」

暖かく、…とても苛々する。それでも沢田綱吉はその子供の手を優しく包んだ。その歳にしては男らしくない柔らかく暖かな手。



あの時もそうだった。特異体質の子供の体で、彼に近づいた時も。

『お母さん必ず見つかるから、なっ?』

頭を撫でながらふわりと笑う。

『……。』
『少し疲れたかな?ほら、背中かすからおいで?』



ドコまでも甘いのだと笑いそうになった。それと共にそんな優しさに甘えたくなる自分を殺す。

のばされた手を、向けられた暖かな背中を、差し出された温もりをそれを掴むことはとても簡単でそれはとても近くにあったのにそれに手を伸ばすことはとても難しかった。


「君は……」


足が止まる。



「骸…?」

心配そうに腰を折り、同じ目線にいる男。


「また、調子悪いのか?」

守護者になったのは君の体を乗っ取るためだと、何度言ったらわかるのか。僕と君は敵なのだ。




「何故そんなにも…」


じくりと右目が痛む。体が悲鳴をあげ、契約を力を拒む。水の音が聞こえる。
(タイムリミットの合図。)



握られた手のぬくもりが熱く感じられた。




「さわ、だ…つな…し」



「骸!?」


次会えるのはいつか。右目が熱い。水滴が零れていた。

君と僕は敵なのだ。
永遠に許されざる罪。




「僕は君を…」






マフィアを全てを








「    ――ます。(永遠に。)」




ブツリと意識が途切れた。











その場に倒れ込んだフゥ太の体を受け止める。それはとても穏やかな寝顔をしていたが…右目からは涙が零れていた。


「骸……。」

『君を…全てを憎んでいます。』

許すことはないと。 その言葉はとても重たいものであった。マフィアによって育てられ実験され全てを奪われ、しかし仲間のためにマフィアに使えている男、六道骸。

でも、なんで…


「そんな辛そうに笑うんだよ…。」


俺はどうすればよかった?例え俺の躯を手に入れてマフィアを全滅させたとしてもきっとあいつは救われない。

それにいくらでもあったのだ。俺を乗っ取る隙など。それでも契約をしなかったのは、きっと彼奴が本当に望んでいるものじゃないから。(だと思う。)
だから俺は彼奴が来たとしても怯えないしむしろまだ幽閉された躯が心配であった。

そしてとても寂しそうに見えたのは、悲しそうに見えたのは、フゥ太の体だったからか?俺に何が出来る?



「ツナ…兄?」

「フゥ太…。」
おはようと、目をこする少年は、先ほどとは別人であった。



「ごめんな?」

それはフゥ太にか。あの男にか。 無理矢理笑う下手くそな笑顔が消えない。彼奴はそんな顔で笑う奴じゃなかった。


救いたいのだと。

それは慈悲か偽善か。それとも……?






「なぁ骸、俺はお前の罪を許さない。(お前もそうだろう?)」

それでも





「お前のコトが好きだと言ったら笑うか?」




「バカバカしい。」
嘲笑の声。




「ふ…骸?」
「どうしたの、ツナ兄。」





気のせいか否か。それでもあの時彼奴は、 (多分笑っていた。)それだけでいいのだ。