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其れが運命だというなら僕は… 神を殺そうと想った。
気づけばボンゴレファミリーという馬鹿馬鹿しい名前のくだらない組織に入れられ早、10年もの時が経とうとしていた。群れることが嫌いな自分としてはそんなものの仲間になるつもりも毛頭無く、はっきり言ってしまえばその群を噛み殺すつもりでいた。しかし、其処に入れば強い相手を噛み殺せるらしいし、…一人気になる奴が居たため…今になれば其れの為だけに入ったと言っても過言ではない(、…のかもされない。)
いつもは弱く群れているだけの癖に何かを守るために突然強くなる草食動物、名を沢田綱吉だと覚えたのは…いつからだっただろうか。他の周りを覚える気はなかった。とある騒ぎに巻き込まれた後、彼を噛み殺しに行ったのだが巧く交わされ、また気づけばイタリアにまで同行させられていたのだ。この僕が、と考えると馬鹿らしくもあり、其れも悪くはないのかもしれないと想った自分は滑稽でもあったと思う。
「此処まで来たんだから、勿論戦ってくれるよね?」
そう問う僕に怯えながら俺なんかと戦っても楽しくないですよと、沢田綱吉は屋敷中を逃げて回り、追いかけっこが始まる。彼との追いかけっこは、なかなか嫌いではなかった。…が、沢田綱吉は最後には知らない暗闇の部屋に閉じこもって、僕が見つけると泣きながら迷子になったと先ほどまで追われてた身なのも忘れ飛びついてきたものだから呆れすぎて噛み殺す気も失せてしまった。他の彼の付属品の群は任務か何かで外に出ているらしく、広いリビングルームで美味しいわけでもなく、かといって不味いというわけでもない微妙な、まるで彼のような(彼が作ったからこんな味になったのだろうか。)ナポリタンを食べ、なんだかんだで夕方まで共に時間を過ごすこととなった。今更、そんな下らない過去を思い出すのも、こんな想いに駆られるのも…誰が想像できたであろうか?
「雲雀…さん…、骸…お願いがあるんです。」
何故、こんなことになった?その瞳には、何が映っていた?最弱にして最強と唄われたボンゴレ10代目、沢田綱吉が長につき7年もの時がすぎた頃、他のファミリーによるボンゴレリングの略奪が決行された。結果は勿論失敗に終わったが其れを期にいくつかのファミリーによる貪欲な奪い合いの紛争が始まり、彼はボンゴレリングの破棄を命ずるコトとなる。リングに慣れ、其れにより前以上により強靭な力を手に入れた守護者は、そう簡単には納得しなかったが、結局は綱吉…彼の命に応じ、その後暫くの間は紛争もなく俗に言う平和な時だったのかもしれない。(まるで…嵐の前の静けさのような…。)
「どうか…。」
ドンッ、強く握りしめた手が血を流しながら、頭から離れない。まるで呪いのような甘い優しい愛しい、苦い声がフラッシュバックする。今この腕の中の空白が憎い。
「綱吉……。」
その名前を呼ぶ度に何かを失って逝く感覚。 平和は長くは続かなかった。発端は、山本武の父親の殺害事件からだ。素人の業ではなく、また元ボンゴレとして生きてきた男がそう簡単に殺られるとは思わない。彼は部下に調査をさせたが、しかし部下が結果を割り出すまでに数人、ボンゴレファミリーに関わるものが殺されていった。アルコバレーノにより、その正体がわかる。名は百蘭、中国マフィアの中でも知られた存在であった。その手はボンゴレに…沢田綱吉に関わった人物全てに及んだ。ボンゴレは一度日本に基点を移し並盛を守るように地下に基地を建て部下などに人々の護衛を任せる。しかし段々と敵は数を、力を強め守護者や綱吉が出る場面も度々増えていった。
アルコバレーノの全てが倒れた日、綱吉は他同盟の呼びかけに獄寺を連れ海外へと外出していた。百蘭のグループは着々とボンゴレ撲滅に配下からも忍び込ませていたのだ。並盛とイタリアに、アルコバレーノに毒である放射能を発し、それに気づかず生活していた彼等はそれらに蝕まれ、息絶えて逝った。なんとも呆気のない最後である。アルコバレーノが倒れ、綱吉は気が弱くなるものの、まだ守るべき者のため戦い続けた。
超直感、という血を彼の性質をあれほど恨んだことはない。事件は、僕と六道骸が任務に当てられたときの事だ。お互い顔を見合わせたくもない最悪の組み合わせに、それでも彼と組ませたのにはそれなりの理由があるのだろう。(綱吉だって僕と彼奴が顔を合わせて何も起こらない訳がないことくらい重々承知していたはずだ。)敵の力が予想以上に伸びていたとはいえお互いに誰かと組むことを極端に嫌う。(綱吉と、は例外だが。)
「是は命令です。」
彼の凛とした声に隠された小さな恐怖。
「怯えなくともわかっております。」
彼奴はわかっていたと言うのか?其れでいて何故惨劇が起きた?六道骸を責めてもどうしよもない。彼奴だって結局はわかってなどいなかったのだ。綱吉が何かを隠し何かに怯えている、ということしか。綱吉は何処まで知っていたのだろうか?返ってこない返事の前に苛立ちを悔しさを隠しきれない。
荒れ地に群れる黒いスーツの大群、見ているだけで嫌気がさす。これだからマフィアは…、隣の男が呟いた。一息吐き、僕等は笑った。
「「さぁ、殺し合おうか。」」
綱吉を苦しめる者がこの世から全て消えれば、誰も傷つけあわなければ、君は前みたいにバカみたいな間抜けなほど気の抜けた笑顔をみせてくれた?黒が赤を吸おうが僕等には関係ない。でも「誰にも彼を赤く染める権利はない。」後ろで六道骸の声がした。
「当たり前でしょ。あの子には…………」
白が 目の前に多い被さった。殆どの敵を倒した頃であった。罠だったのだ。六道骸と僕を消すための。沢田綱吉は炎で僕等を投げ飛ばした。 白いスーツが
赤く 赤く 染まる。
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"アアァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!」
声をあげたのは六道骸であった。地面が割れ炎が吹き荒れる。大蛇が落ち敵は自らを殺し合った。 地獄絵図、とはきっとこういうものを言うのだと、頭の片隅でぼんやりと描いていた。力を使いすぎ、また自我を失ったような六道骸を一瞥しながらも肩に背負う。
「……………。」
未だに理解出来ていなかった。否、理解したくなどなかった。沢田綱吉の前で六道骸をおろす。
「つ、な…」
六道の言葉が声にならない。白い彼は赤く赤く…赤く染まっていたのだ。ヒューヒューと、苦しそうな音など聞きたくはない。どうか…。無意識に抱き締めていたけれども誰も何も言わず、沈黙の中、やはり彼の風穴の音が、耳障りであった。
「綱…吉…綱吉綱吉綱吉……つな、」
やっと出た言葉は、まるでそれしか知らない子供のようで…頬に触れた手は、とても暖かかった。ふわりと、まるで母子のような微笑み。
「泣かない、で……ください……。」
嗚呼、そうか………僕等は泣いていたのか。
「雲雀…さん、骸…お願いが……あるんです」
まるで自分は最後だとも言いそうな台詞。そんなの認めない。
そんなの…
「そんなの…認めません。貴方の居ない世界なら…在る意味など…………」
六道骸の声は掠れていた。それでも綱吉は笑うのだ。
「どうか……… 」
赤が白いスーツを浸食する。
「僕以外に噛み殺されるなんて…許さない…………」
どうして君は、そんなになってまで僕等の為に笑えるというのだ?
「なら…、最後は…ひば…恭也が…噛み殺して下さい。」
何の冗談?馬鹿なことを抜かす余裕があるなら前みたいに怯えて逃げ出して最後には迷子になって泣きながら僕に抱きついてよ。ねぇ……………、
「変わりに…どうか俺の代わりに皆を守って……?」
ボンゴレなど崩壊してもいいから…と…彼は笑う。 赤い唇に…噛みつくようなキスをした。
「不味い…、ねぇ、逃げ惑うくらい新鮮な獲物じゃなきゃ…認めない。」
「酷い…な…」
上手く筋肉を動かせないのか、彼は瞳を閉じたまま声だけで笑う。愚かだ。馬鹿だ。とんなエゴだ。とんだ甘ちゃんで馬鹿で頭が弱くて…誰が、守ってなどと言った。
「何が…守護者だ!!!!!!!!!!!!」
六道骸か、それとも自分だったのか…叫び声が…響いた。
「綱吉君…」
嗚呼どうか 命など要らないから
「愛してます…恭也、骸」
二度と返事の返ってこない抜け殻。其れを抱いたまま僕等は・・・・?どうすれば良かった?目眩がした。六道骸が静かに立ち上がった。
「こんな処に居たら綱吉君が風邪を引いてしまう。」
「……ああ、そうだね。」
そっと抱き上げた躯(からだ)は… 六道骸は右目から赤い涙を流しながら…泣いた。
「君の居ない世界はこんなにも汚れている。」
六道骸の声が忌々しく残った。 そして僕は神を呪う。
(何故 こんなことになった?)
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