※暴力表現注意。


この僕が 馬鹿げていると・・認めたくなかった。ただ怯えた顔をされるのが苛つく。名前を呼んだ瞬間 一瞬だけビクつかせる肩が目障りでだから・・・・

「君なんて大嫌いだ。」

今日も、トンファーを握った。彼は間抜けな声をあげて、少し大きく吹っ飛んだ。他の奴等に比べると全くもって手ごたえもなく、楽しくない。軽い・・のだろうか?そんなに強く殴ったつもりはなかったんだけど。彼はまだ怯えた瞳でこちらをみて
「雲雀・・・さ」
震えた小さな声で名前をよぶ。嗚呼 お願いだからそんな瞳をしないでよ。お願いだからそんな顔しないでよ。お願いだから そんな声でそんな表情でそんな仕草で 僕を見ないでよ。さきほどよりもトンファーに力が入り、顔を傷つけないように腹部、足、腕 折れない程度に殴りつける。血がついた。けれどもやはり手ごたえなどなくて楽しくなくて苛々が募っていくばかり。

「なんで君は そんなにも弱いの?」

前、僕をスリッパで殴った力はどこにいったの?ねぇどうやったら君は僕を楽しませてくれる?ただ一方的に殴るのは・・ 好きだけど これじゃあ全然面白くもなにともない。抵抗はしないし声はあげないし、ただ殴られれば不安と恐怖と悲しみを含んだ目で僕を見る。

「そんなの 俺が知りたいくらいですよ・・・・」
震えた声で、それでもはっきりと 目を逸らさない。そのとき、やっと ・・・面白い そう思えた。
トンファーをしまい、ゆっくりとソファーへと腰をかける。彼は何も言わず、床に座ったまんまだった。
「君は変わっているね。」
「・・・貴方ほどじゃないです。」

「噛み殺すよ?」
しまっているトンファーを取り出そうとすると慌てて「す・すいませんでした!!」という声が返ってきた。
本当に・・変わっている。弱いくせにどこかまっすぐな瞳をしていて突然強くなって・・・その理解不能な行動はあまり面白くないはずなのに、嫌いじゃない。そんな感情を抱く自分にやはり苛々がつのる。
たちあがって・・彼の近くまで来ると、やはり相変わらず怯えた目のくせに、じっと・・・瞳をそらさずにただ僕を見る。
「な・・何ですか?」
きっと・・傷みなんかより沈黙のほうが耐えられない太刀なのだろう。ネクタイを掴み思いっきり引っ張る。
「う  ワァっ!」
案の定、バランスも取れずに前へと倒れこんでくる彼。あんまり力はいれてないはずだけど・・やはり軽いのか。そのまま無理矢理立たせるような体制で彼を持ち上げた。ネクタイを引っ張れば首が絞まるのは当たり前だ。苦しそうな表情を浮かべながらもはっきりと瞳をそらさずに・・面白い。思わず頬が緩むと彼は困惑の表情を強めた。


「あんまり騒ぐと・・噛みつくよ?」
「はっ?!」
怯えているくせにどこか本性を隠せないのか失礼な顔をする。まだ首が絞まったままで苦しいのか歪む顔すら愛おしい

・・・・・いや・・何を考えているんだ僕は。愛おしいなどと馬鹿げた感情。
「放して・・・ください」
やっと彼があげた精一杯の抵抗の声。そのままただ放したんじゃ面白くない。
「・・煩いよ。」
自分でも何を想ったのか・・・ 触れるだけのキス。いや・・どちらかといったら先ほどの言葉どおり噛み付いたといったほうが正しかったのかもしれない。彼の血の味がする。小さく彼が漏らす声が面白くて ネクタイを放し 彼が思いっきり酸素を吸ったところでまた 噛み付いた。うっすら目を開ければ彼は恐怖からか傷みから・・・それとも別の感情か顔は歪んだままで 唇を放せば真っ赤な顔をして此方を睨んだ。


「・・・・・・・。」

手を放し、興味が尽きた物を捨てるように彼をみることもなくただソファーへと座った。どうせなら今のうちに目の前にあるドアから逃げてしまえばいいのに。このまま此処にいたって僕に殴られるだけだ。馬鹿なのかそれとも恐怖でただ足がすくんでいるのか・・そんなの僕には知る由もないけれども。


「逃げないの?」
「・・帰って・・いいん ですか?」
「好きにすれば。」
彼はゆっくりと立ち上がった。 嗚呼 僕は一体何を考えていたんだろう。自分でも不可解で理解出来ない行動に苛つく。これ以上見ていると何をするか自分でもわからない。それが何の感情なのかもわからなくてそれが又自分を苛つかせる原因となる。

「早く出て行かないと今度こそ噛み殺すよ?」
立ち上がったまま出て行かない彼を一瞥し、トンファーを握る。

「んで・・・」
「・・何?」


「なんで・・あんな事したんですか?!」
彼は顔を歪ませて此方を睨んだ。
「さぁね。君に答える筋合いはない。」

一瞬だけ悲しそうな顔をしたのは 見ない振りをした。

「逃げないのは・・貴方が嫌いじゃないからです。」
ドアが閉まる前に聞こえた台詞。鼻で笑う。
なんであんなことをしたか?
そんなの・・僕が聞きたいくらいだ。

一人、取り残された応接室。(いや・・取り残されたなんて言い方は可笑しい。元々この部屋は僕一人の物だったじゃないか。)虚しさだけが残って・・そんな馬鹿ばかしことを考えて・・
今更 愚かな感情に気づいた。

 

 


嗚呼 僕は彼が好きなのか。

 

 

本当に 鼻で笑うしかなかった。
(少しは優しく出来たら変っていたのかもしれないのに。)